FC2ブログ
カレンダー
06 | 2006/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
プロフィール
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
FC2カウンター
ブログ全記事表示
ブログランキング
ニナンサン 中上紀(新潮2006/04月号)
 
新潮 2006年 04月号
【完全ネタバレ全あらすじ】
 妊娠中の「私」はソウルで交通事故に遭い現地で入院した。幸い母子共に無事だった。見舞いにきた母は「ニナンサン」の方角に向けて手を合わせた。ニナンサンとは母の聞き間違いで、韓国語ではインウァンサン(仁王山)と発音する。ソウル近郊の霊山であり、「私」の母が弟を妊娠中に、当時ソウルにいた父がこの霊山で子供のことを祈り、その後、弟が無事生まれてきたという。
 交通事故から一年後、「私」は友人の晴美と共に再びソウルを訪れる。その夜、二人は大酒を飲み、晴美は恋人に妻子が居た、最近偶然知ったと言って泣いた。翌朝、まずは入院していた病院へお礼を言いに行こうとするが、入院時の辛い思い出が蘇り、病院の前で引き返す。
 ホテルに戻ると、晴美は昨夜の深酒で沈没していた。「私」も少々腹が痛かったが一人で霊山に行った。タクシーで近くまで乗り付け、近所のおばさんに道を聞くと祈祷場まで案内してくれた。「私」は去りゆくおばさんの後ろ背に、私は何を祈ろうとここまできたんですか? と問いかける。直後腹痛が激しくなり、「私」はすぐにおばさんの家まで戻ってトイレを貸してもらう。
 その後ホテルに戻ると腹痛は嘘のように消えた。晴美が不在だったので再び外出し、なんとなく遊覧船に乗って缶ビールを矢継ぎ早に飲む。「私」は夕日を見ながら、破水して緊急入院したこと、そのとき同居していた男が不実であったことなど、出産時の苦労を回想する。また、生まれてきた子供がかわいいと思う。
 晴美の携帯に何度か電話したがいずれも不通だった。夜になって晴美から携帯に電話があり、晴美は「私」が出て行った後すぐ起きて、一日中観光していたと楽しそうに言った。「私」は置手紙くらいしてくれと晴美の勝手な行動を責める。それから観光中に晴美が知り合ったという日本語の堪能な韓国人の男と三人で焼肉を食い酒を飲んだ。「私」は同居男がいて、晴美は不倫関係の男がいるが、二人ともカレシはいないと韓国男に言う。「私」は繊細な晴美が不実な不倫相手を忘れて韓国男とうまくいけばいいと思う。
 ダンスフロアの隅で、「私」が子供や同居男のことをウジウジ考えていると、晴美が、昨夜の話には嘘があった、実は相手が結婚していることは知っていた、騙されたのではないと打ち明ける。しかしそう言いながら晴美はまた涙声になった。晴美は美しい女だった。「私」は晴美と共に踊った。「私」は踊りながら酔いながら涙を流しながら黒服の男に手を引かれながら、突然霊山に行きたいと言い、黒服の手を振り払い走り出す。タクシーに乗り、深夜女一人で異国の見知らぬ路地で降り、歩き出す。
 「私」はソウルで入院したとき世話をしてくれた女性から、トッケビという韓国の妖怪の話を聞いたことを思い出す。やんちゃな子供のことをトッケビと呼ぶこともあり、「私」の悪戯好きな弟が母に連れられソウルに行ったとき、トッケビと呼ばれたこともあった。男がずっとトッケビのままなら、「私」も晴美も苦しまずにすむだろうと「私」は思う。
 誰か男が近づいてきて、「私」は捕らわれると思う。男に手を取られ空を飛ぶうち、光にみちあふれている山が目の前に聳えていた。この山こそが私のニナンサン、私の祈りの山に違いない。「私」は上空から祈祷場で祈る清美や母親や若いころの自分を見たり、花畑で花を摘む小さいころの「私」の弟や「私」の息子や彼らを連れて行くたくさんの白い鳥たちなどを見る。そしてふとベッドで目が覚めるとそこは病院だった。一年前に逆戻りか?
 と思いきや、目の前には空を飛ぶ前の路地が続いていた。「私」は、思い出したくなかった記憶を遂に思い出す。一年前退院が近づいたとき、迎えに来てくれたのは、同居男だった。彼に車椅子を押してもらい、異国の市場を散歩した、今思えば男と過ごした最上の時間だった。男はそのときまたここに来ようと言ってくれたが、その後男はまた「私」の家に寄り付かなくなってしまった。そしてその後、「私」は久しぶりにやってきた男の携帯をリダイヤルしてみた。女の声が出た。結局、「私」の相手にも妻がいたのだった。
 気がつくと、「私」はダンスフロアにいて、晴美に介抱されていた。晴美に聞くと、「私」はずっとここにいて酔っ払っていたらしい。
 ホテルに戻ってこんこんと眠った後、「私」と晴美は、冒頭で霊山を案内してくれたおばさんのやってる食堂で肩を寄せ合って唐辛子の利いたネンションを食べた。「私」は晴美に韓国男のことを聞かなかった。晴美も日本の恋人のことばかり話した。帰りの空港で「私」と晴美は別々の飛行機に乗った。成田に着いた後で、携帯に晴美からメールが入り、「私」は家で待つ男にあと二時間くらいで帰宅しますと書いたメールを打った。

【感想】
 病院にまつわる辛い思い出を、病院へ行こうと決め、出かけ、病院の前に来るまでまったく思い出さず、そこで突然思い出してやっぱり病院へは行かない。深酒のせいで腹が痛いと言っておきながら、その後トイレでしゃがみつつ、山の神に拒否されたのかと心配する。でもその後で、すでに祈祷場で子供が無事出産したことのお礼参りをしたとも言う。では、おばさんの背中に「私は何を祈ろうと……」とかトンマ過ぎる問いかけをしたのはなぜ? そして腹痛が収まるやすぐに出掛けまたビールを飲みだす。その日のうちにさらに焼肉を食って酒を飲み、酒を飲みつつ踊りまくる。とにかく主人公がバカすぎ。そう思って読んでいたので、突然店を飛び出してタクシーに乗ったところからずっと夢だったのは、うまく騙された感じがした。
 さて、不倫男とラストの家で待つ男が同一人物ならば、男の心変わりがあったはずだが、それが全然書かれてない。両者は別人で今は新しい男と一緒に暮らしているのかとまで考えてみたが、そんな描写もまったくないので、どうやら「私」と不倫男は腐れ縁が続いているということのようだ。
 おそらく晴美の不倫を軽蔑していたはずの「私」自身が実は不倫していた、というオチなんだろうな。つまりこの話のメインは、晴美との友情のほうだ。冒頭から晴美が不倫をしたり旅先で自分勝手な行動を取ると責めてみたりしつつ、実は自分も不倫をしていた、そしてやっぱり晴美は親友であるという結末。
 なるほど、そう解釈してみると、なかなか構成に工夫があって良かったと思います。

スポンサーサイト



純文学・随筆/その他 | 【2006-07-31(Mon) 09:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)

お薦めサイト

福岡ストーリー|無料で読みやすい小説・ライトノベル