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図書準備室 田中慎弥(新潮2006/07)
 
新潮 2006年 07月号 [雑誌]
【完全ネタバレ全あらすじ】
 法事の際、親戚になぜ働かないのかと問われて、三十過ぎて一度も働いたことがない「私」は、子供の頃の思い出を語り始める。
 「私」は小学生のころ通学路でしばしば目つきの悪い男と出くわし、見られるたび気味悪く思い顔を背けていた。中学生になってしばらくして、彼が吉岡という名で、自分の中学の国語教師であると知るが、校内で出会っても、なんとなく挨拶できないままの状態が続いた。
 「私」は、友人から吉岡が若いころ女性がらみのいざこざで仲間をリンチしたことがあり、そのことが今になって週刊誌の記事になりかけたという噂を聞く。「私」は、戦争中に国のために無私の気持ちで勤労する一方で残酷なリンチを行った吉岡と、平和な現代に吉岡に対して挨拶すらしない無礼な自分とを対比させて考える。
 文化祭の日、「私」は図書準備室で偶然吉岡と二人きりになる。長く挨拶しなかった「私」に対して許すかのように優しく微笑む吉岡に対して、「私」は彼を不潔だと思い、「あなたが戦時中に仲間をリンチし、女性を強姦したという噂は本当か」と問い詰めた。
 吉岡は仕事をサボって女に会ったという噂のある男に対して、正義感と嫉妬心を感じ、仲間と一緒に無抵抗な彼の性器にミミズ入りの芋団子を塗りつけ、鶏に突付かせた。まもなく戦争が終わったが、被害者は吉岡らを告発せず単に無視した。ところが、二年ほど前にどこからか噂が広がり始め「私」の知るところとなった。吉岡は、戦争は大義があるがリンチは大義がなく、悪いことをしたと反省している、と「私」に言った。その後、吉岡は「私」に声を掛け挨拶するようになったが、「私」は吉岡を無視し続けた。
 ふと気付くと「私」の回りにあらかた人がいなくなっており、従兄の小さな娘ひとりが残っていた。自分が戦争に行けと言われたら逃げ出すだろうと「私」が言うと、彼女が、逃げてからどうするのと問う。「私」は、話ならいくらでもできると答えて、再び話し始めるため彼女へ正対した。

【感想】
 うーんこれは、あまりおもしろく感じなかったですねえ。このブログではおもしろかったものだけを紹介する方針だったんですが、でも、せっかくがんばって読んだので、なんとかおもしろいところを探してレビューしてみようと思います。
 この作品の魅力は、今の大人たちに、いわゆる「現代性」を感じさせるところなんだろうと思います。小説における現代性とは、単に今起こってること、誰もが知っているようなことを示すことではなくて、「大人たちがよくは知らないけど気になってることを既に知ってることと関連付けて示す」っていうテクニックのことなんじゃないかなあと最近思います。
 具体的にどういうことかというと、ニート、これはよくわからないけど、何か現代的なものかもしれない、と思ってる人たちがいて、そういう人たちにニートとはこういうものですよ、と言うだけではダメで、そこによく知っている戦争の話を持ち込んで、よく知ってる話と知らない話をひとつのパースペクティブの中に組み込んで見せることによって、ニートに対する遠近感がつかめたような気にさせるってことだと思います。問題は、実際のニートをより深く理解できたかどうかじゃなくて、噂に聞くニートを今までになく間近に見たような感覚を生じせしめるってことであり、それが社会学ならぬ文学の本分なんですね。
 そうすると、吉岡がリンチや強姦をしたと追求されるのは、旧日本軍の写し絵かなと思わせたり、彼がリンチしたのが勤労動員をサボる怠け者だったりして、それとニートを対照させて、何が正しいかとか真面目ってどういうことかとかいう社会規範の問題を提起しているのかな、と思わせるそぶりもなかなかうまい感じがしてきます。結局結論は出ないのだけれど、文学は哲学でも道徳教育でもありませんから、読者に何か気掛かりな感じを植えつけることができればそれで成功なわけです。
 しかしながら、私はそもそもニートが問題だとも現代的だとも思わないので、この小説をおもしろく感じることができなかったのでしょう。
田中 慎弥
図書準備室

296.描写を発見する・其の六
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00296.htm

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純文学・随筆/その他 | 【2007-02-03(Sat) 09:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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