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ホームランド シーズン3


ホームランド シーズン3を読了して最初に感じたことは、この結末は政治的な左右両派にとって共に納得いきかねる結末だったろうということだ。

主人公のニコラス・ブロディは、アメリカの大義のためイランに潜入し、スパイ工作の挙句、イランの将軍を暗殺する。アメリカの立場では、彼が軍事的対立の元凶であり、彼さえ殺せばアメリカの安全が守られる。そしてラストでは、将軍を暗殺されたイラン側からアメリカとの和平交渉を求める様子が描かれる。

たとえばの話だが、想像してもらいたい、仮に、日本の安倍首相がTPPにどうしても反対である。しかしTPPの成立こそアメリカの国益であるので、CIAが安倍首相を暗殺して、もっとアメリカに都合のいい人物が日本の首相になり、それがアメリカの国益であり、暗殺したニコラス・ブロディはアメリカの英雄である、という話が成立するだろうか。

まずもってそのような単純な勧善懲悪CIA史観とでも言うべきものを全面的に肯定するドラマなのだろうか。私にはそんな単純明快なドラマだとは到底信じられない。

このドラマが結末で示しているのは、ニコラス・ブロディがつばを吐きかけられ、最大の侮辱を受けた上で、絞首刑になることである。彼は出国時に、自分の娘に二度と会いたくないと言われ、生きて戻って汚名を晴らしたいと言っていた。もしブロディが英雄であれば、現実はどうあれ、フィクションの世界では生還していたはずだ。

ゆえに、この結末は、ブロディを国家の英雄としては描いていないということだ。

なるほど、ブロディはイスラム過激派に洗脳され、一時はアメリカの要人暗殺を試みた。しかしその後改心し、キャリーと恋に落ち、生まれ変わった。にもかからわらず、あまりにも報われない彼の死は、何を意味しているのだろう。

アメリカ右派の理屈は容易に想像がつく。ブロディは一時とは言えアメリカを裏切った。だから天国にはいけないので単に地獄に落ちただけだと言うのだろう。

しかしドラマツルギーから見て、シーズン3までの主人公はブロディであり、彼がテーマを体現しているにちがいない。そしてフィクションだからいかようにも彼を助けることができたのにそうしなかったのだから、そうしなかったことがこのドラマのテーマと直接結びついているとしか解釈のしようがないが、そうであれば、このドラマのテーマは、「アメリカの英雄は地獄に落ちる」となり、右派の解釈と明らかに矛盾する。

一方で、アメリカ左派の理屈も容易に想像がつく。ブロディの死は、共和制政府の下で個人の尊厳が傷つけられ見捨てられた悲劇を描いていると言うのだろう。

なるほどアメリカ政府及びCIAは彼を英雄と認めなかった。しかしただ一人彼のヒロインのキャリーが最後に壁に英雄の星を描き入れた。このラストは、ドラマ上、ブロディが彼女の英雄であることを明確に示している。

彼はドラマ上英雄であるが、その理由は、アメリカ政府を守るためイランの要人を暗殺したからだ。彼は決して被害者として描かれてはいない。ここに至って、左派的解釈は破綻する。

私は、シクロフスキーが、トルストイの戦争と平和を評して、トルストイは当時の古きよきロシアの貴族階級に愛着を持ち、その素晴らしさを描こうとしたが、結果として、現実を活写する技法が作者の意図をも裏切り、ただ素晴らしいだけでなく、醜いところも矛盾するところも含めてより立体的な文学となったと指摘していたことを思い出す。

私はフォックステレビやそのプロデューサーが、どのような作品を作ろうと意図したか知らない。ひょっとすると、愛国的で右翼的でもっとずっと単純明快な作品にするつもりだったのではないかと夢想する。

けれども現実世界を活写しようとする力が、脚本家の意図さえも超えて創作の女神ミューズの口づけを受けるとき、その奇跡は起こる。このドラマが矛盾しているとすれば、それはこの現実世界が矛盾しているからだ。

政府は非情であり、CIAはいかがわしく、ブロディは個人の尊厳を賭けて最後まで戦い、その奮闘は報われずに終わる。

これが今の現実世界なのだ。それをまざまざと活写することに成功した、ゆえに本作は、成功作であり、傑作である。




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映画/ドラマ/アニメ・マンガ | 【2015-12-04(Fri) 15:58:39】 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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